第19回図書館総合展フォーラム 質問・回答

2017年12月15日

株式会社メディアドゥは、11月7日~9日に開催された「第19回図書館総合展」にて、電子図書館に関するフォーラムを行いました。当日は多くの方にご参加いただき、質問も多くお寄せいただきました。この度、お寄せいただいた質問について、登壇者の皆様にご協力いただき、回答をご用意させていただきました。

~潮来市立図書館 船見館長への質問~

Q. 現在のコンテンツ購入のバランスは、電子と紙でどのようになっているのでしょうか。また、図書館資料として、電子と紙とで、どのように使い分けをされているのでしょうか。

A. コンテンツ購入のバランスとして、図書と電子図書で概ね9対1の購入冊数比率です。使い分けについてですが、図書を借りてじっくり利用する方もいらっしゃれば、電子のほうを借りて必要な部分を必要なときに利用し、なるべくかさばらないようにしたい方もいらっしゃると思います。選択肢の1つとしてツールが提供できることは、利用者側にとってみて個人の生活環境に合わせて利用してもらえばいいことだと考えています。

Q. 予算費目についてもう一度説明していただけますでしょうか。

A. 電子図書の購入に関するものは、全体的な費目は図書資料費になりますが、科目として電子図書は消耗費として計上しています。それ以外の図書は備品費になります。電子図書館のシステム(保守)に関する費目は図書館システム費として科目を分けて計上しています。

Q. イベントでリクエストされた作品は、新たに購入するのでしょうか。

A. 平成29年8月に実施したPHP研究所様とのコラボ事業にて選書希望された電子図書は結果としてすべて購入しました。内容として、既に所蔵しているものや収集方針に該当しないものは除外するといった一定のルールで選定作業を進めました。

Q. 電子図書館による学校図書館への支援では、生徒が公共図書館の電子図書館システムを介して洋書を利用できるということなのでしょうか。

A. 基本的に、潮来市立電子図書館は市立図書館の利用規定の対象であればログイン用アカウントの発行を行っています。生徒自身がログイン用アカウントを所持していれば電子図書を利用することができます。 学校団体としてログイン用アカウントを発行し利用範囲である生徒に対して無制限に利用して良いというものではありませんので、運用面では注意が必要です。

Q. 潮来図書館での電子書籍の利用率や利用者層を教えていただけますでしょうか。また子供や障害をお持ちの方の利用はありますでしょうか?

A. ログイン用アカウントの発行数は、平成28年度の実績として下記の通りです。
・配布数:377名
内)~10代:62名、20代:68名、30代:107名、40代:91名、50代:36名、60代:11名、70代以上:2名

同様に、実際に利用している利用者層は下記の通りです。
・利用者層:10代~30代:55% / 40代~50代:43% / 60代~:2%

小学生くらいの年齢層で電子図書館を利用しているとの報告を受けたことがあります。また、障害者支援施設の方で利用しているとの報告も受けたことがあります。特に子育て世代の保護者からは絵本や児童向けの学習図書を中心に電子図書を増やして欲しいといった要望を受けております。

Q. 今後、図書館で行いたいイベントとして、どのようなことをお考えでしょうか?電子書籍の利用率を増加させる対策があればご教示いただけますでしょうか。

A.潮来市立図書館では、利用ガイダンスのほかに出版社と連携したイベントも開催しましたが、趣旨としては電子図書館の利用促進が目的の一つです。
今後は、市場コンテンツの購入だけでなく地域資料のデジタル化を促進し、電子図書館上で公開する取組みを行っていきます。また、利用者参加型として、例えば自伝やオリジナル絵本、小説の製作支援と公開等も模索していきたいなと考えています。

Q. 英語のコンテンツを学校の先生に提供するというのは、具体的にはどのような提供方法となりましょうか。

A.学校図書館巡回貸出事業の一環として、日本語の図書資料(絵本、読み物、調べ学習用図書)の他にセット資料を組んで貸出をしています。
潮来市立図書館が提供するOverDriveの電子図書館は海外コンテンツが多いという利点がありますので、英語学習のテキストや子どもでも読みやすいコンテンツというものを選定しコレクションに入れて、各学校への貸出の際にチラシ(目録案内)として宣伝しています。

~株式会社PHP研究所 今井様への質問~

Q. 電子化する書籍としない書籍はどのように決められていますでしょうか。

A. PHP研究所では、基本的に全てのタイトルを電子化する方針で電子書籍化を進めております。ですが、「書き込み式」や「塗り絵」など、電子化には適さず、紙での表現が前提とされているタイトルもございます。
また、著作権者や写真等の権利上の問題や、古い書籍についてはデータを含めた当時の制作状況の確認や、著作権者の方とご連絡を取ることが困難なタイトルもあり電子化を断念するタイトルもございます。 それでも、課題を一つずつ解決しながら、一点でも多くの電子書籍タイトルを読者の皆様にお届けできるよう進めております。

Q. もし大学図書館と共同でイベントを行うとしたら、どのようなイベントをしてみたいとお考えでしょうか。

A. 例えば、著作権者の方をお呼びした講演会を開催し、そこで著書を見ながらお話をしていただくイベントや、ゼミ・研究室と協力してイベントや授業の開催、また技術開発などを行っている大学などとのコラボレーションができれば非常に有意義だと思います。

Q. 電子図書館の普及は、出版社にとってどのようなメリットがあると考えていますでしょうか。また、電子図書館向けコンテンツの選定基準はどういったものなのでしょうか。

A.コンテンツと読者を結ぶルートを拡大することは、出版社にとって最大のメリットだと思います。そのためPHP研究所では、読者の目に届きにくくなってしまっているタイトルから電子図書館へ提供しています。また、広く長く読者に届けていきたいロングセラータイトルなども積極的に展開しています。

Q. 著作者は電子書籍にどのくらい期待していますでしょうか。

A. 今や、著作権者にとっても電子化は「当たり前」のことになってきていると感じられます。まだまだ著作権者の方の要望を全て満たすまでには達していませんが、新たな、広い読者へのアプローチとして電子書籍に期待されている方は多いのではないでしょうか。

~浜松市立中央図書館 鈴木館長への質問~

Q. 利用者はどういった層を想定されていますか?(外国籍の方、外国語を勉強している日本の方など)

A. 国籍は問わず、浜松に在住・在学・在勤で日本語以外を主な言語としている方や日本語以外の言語を学んでいる方、また電子図書に関心のある方などを想定しています。

Q. 浜松市の電子図書において、日本の方向けに特に重点的に扱いたいジャンルなどはありますか。

A. 英語学習のニーズに対応できる資料を重点的に導入したいと考えています。

Q. 浜松市は多文化サービスを目的の1つとして電子図書を導入されるとのことですが、電子書籍のコンテンツは洋書と和書の比率をどのように検討されていますか。

A. 今回の導入は多文化サービスを主軸にしています。そのため、まず多文化サービスの資料を選書し、その後和書を選書したいと考えているため、比率については資料の状況を見ながら検討していく予定です。

~北海道天塩町 齊藤副町長への質問~

Q. プログラミングの教育ってお金がかかるイメージがあるのですが、実際どのくらいかかるものなのでしょうか?

A. ソフトバンク社会貢献プログラムに参加し、Pepperを導入してプログラミング教育を実施しているため、町の負担はありません。

Q. "ライドシェア"を実施するにあたって、利用者間でのトラブルやその他問題点などはありますでしょうか。もしあれば、どのように対処されているか、詳しくご教示いただけますでしょうか。

A. 今のところ利用者間での大きなトラブルはありません。課題として、携帯電話を持っていない・インターネットを使用できない高齢者の需要が多いこと。その場合は、役場で電話での申し込みを受け付けて対応しています。

Q. 天塩町の電子書籍は、学校教育の場でも活用されているのでしょうか?それとも各家庭・個人での自発的な活用でしょうか?

A. 各家庭、個人での自発的な活用しています。図書担当によるリードアロング機能を活用したおはなし会や、こども園(保育所)と連携した幼少期からの英語教育を実施するために活用していくことを計画しています。

Q. 複数ある電子図書館の仕組みでオーバードライブを選択される理由は、グローバルな環境で標準的だからでしょうか?

A. 英語は世界共通語であり、グローバルな環境では標準的です。グローバル人材育成を行うために、英語教育の推進を図っていく上で、洋書が豊富であるオーバードライブ社の電子図書館を選択しました。

~OverDriveサービスに関しての質問~

Q. 学校での英語学習にORTのような多読資料はよく使われているが、OverDriveのラインナップにORTあるいは類する多読用洋書はあるのですか?

A. Penguin Young Readers、Who was …? シリーズ、Scholastic readerがあります。Oxford Bookworms Library、ラダーシリーズがまもなく追加される予定です。

Q. OverDrive にはDDAのシステムはあるのですか?

A. 利用者が電子図書館サイトを通して図書館に対して購入リクエストを送ることができる仕組みがあります。図書館員は選書・管理用のサイト上でリクエストの状況を確認し、選書に活かすことができます。